おぢやの伝説

一晩でできた十王堂

むかしのお話しです。
真人本村の藤巻医院のうしろに十王堂というお堂があり、十王さまがまつられています。今のお堂は何回か建て直されたものです。この十王堂のお話しです。
ずっと昔のこと、一人の旅人が真人にきて庄屋さんの家に泊まりました。その旅人はそのまま居ついて、毎日仕事をせずに酒ばかりをのんでぶらぶらしていました。庄屋さんは情け深い人でしたので何も言いませんでしたが、家の者は「何というなまけ者だろう、いったい何者だろう」などとうわさしあっていました。
一ヶ月ほどたったある日、旅人は主人に、
「長い間大変ごやっかいになりました。ご恩返しにお堂を建てたいと思いますが、木材を用意していただけませんでしょうか。」
と申し出ました。庄屋さんはちょうど「村の人たちがおまいりをしたり、集まって話し合いをしたりするお堂がほしい」といっていたところだったので、心よく木材を用意してやりまいた。
旅人はある日の夕方から仕事にかかりました。夜になっても木をきざむ音がたえません。庄屋さんが夜中にこっそり仕事をしているところをのぞいてみると、旅人はのみで木をきざみ、木っぱがとんだかと思うと、それが次々に弟子になって仕事を手伝うのです。弟子の人数はそうしてどんどんふえていくのです。面白いように仕事がはかどり、夜明け前にすっかりできあがってしまいました。「あっ、もうできあがってしまった。」と思い、ふと気がつくと、弟子たちは一人もいなくなっていました。
あっけにとられている庄屋さんの前にきた旅人は、
「長い間ごやっかいになりました。お約束のお堂も十王もできあがりましたので、これでおわかれします。では・・・・・。」
といって出かけようとしました。庄屋さんは追いすがって、
「せめてお名前をお聞かせください。」
というと、
「飛騨の甚五郎という者です。」
と言ったまま、スタスタと朝霧の中に消えていったということです。
飛騨の甚五郎とは「左甚五郎」といわれ、当時日本一の木工師といわれた人です。

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