【はじめに】
何となく誘われるままに入会した私は、当初、何のためにこの活動を行っているかの意味もわからず、またそれについて追究することもなく、ただ漠然と活動に参加していました。精力的に行動するメンバーたちをみて、なぜこの人たちはこれほどまで青年会議所活動に没頭できるのだろうかと考えてしまうこともありました。しかし、年数が経つに連れ、青年会議所活動に真剣に向き合っている先輩方やメンバーから、あるときは日常生活で受けることのないほどの叱咤激励を頂き、またあるときは身を粉にして協力してもらったのです。そして、一つの事業を終える度に絆が深まり、感動を共有し、そして何十年来の付き合いのような情や信頼が芽生え、新しくファミリーができたような喜びがありました。また、そこには多くの気付きがうまれ、刺激を受けるといったチャンスに出会うこともできました。そのような時間を一緒に過ごした先輩方が卒業されていく中で、これからどのような青年会議所活動をするべきだろうかと感謝の想いとともに考えたのです。青年会議所という最高の学び舎で私が得た事を多くのメンバーと時間を共有しながら、少しでもこれからの世代へ伝えていきたいとの想いが溢れてきました。
「動機善なりや私心なかりしか」という言葉があります。青年会議所や地域のことを考えてのことなのか。JCメンバーのための活動なのか。理事長として立候補するにあたり何度もその動機を自問自答しました。その答えがでなければ、やる事に信念を持てず、周りからも協力をしてもらえないだろうと思ったからです。そして、青年会議所活動を通じて学んだ困難であったとしても挑戦する気持ち、こころからの感謝という気持ちを忘れず、明るい豊かな社会の実現に向けて真摯に活動していくことを決意しました。また、周りが想像している以上の事業を行うことで、小千谷青年会議所への感謝を表現していきたいと考えます。
【55年間に感謝】
1959年に創立した小千谷青年会議所は、本年度で創立55周年を迎えることとなりました。1949年に日本の青年会議所運動が始まったことを顧みると、非常に歴史ある青年会議所の一つであると言えます。その過去の歩みを見ますと、地域に対する提言や国の問題を考える機会、おぢやまつりに関連する事業、自己啓発に関する事業、まちづくりそのものに焦点を当てた事業、わんぱく相撲等、時の社会情勢を踏まえながら、様々な視点により運動を行ってきております。団体の名称についても1984年に社団法人格の取得、昨年一般社団法人格取得へと時代の流れとともに変化を遂げています。しかし、明るい豊かな社会の実現を理想とすることは永久不変です。それを貫いてきた結果、青年会議所主催から内容や運営形態が変化しながらも現存する事業があることは、この団体の誇りであり、自分たちで地域の課題を見出しながら事業を計画し、活動することが重要な要素であると改めて考えさせられます。
第56代理事長を拝命するにあたり、青年会議所はどんな団体でどんな活動をしているのかをより多くの方々へ理解してもらえるようなJCの魅力を発信していきながら、今後もこの地域に必要とされる存在であるために、青年会議所の組織価値を向上させることを使命とし、進んで行きたいと考えます。そして、歴史を繋いで来られた先輩諸氏に心からの感謝の気持ちと敬意を表しながら、また私たちを支えてくださっている行政や市民の皆様に感謝の気持ちをもちながら未来へ向かって邁進する所存です。
【組織の価値向上】
組織とは、特定の目標を達成するために人々の諸活動を調整し統括するシステムを意味します。組織としての魅力や価値を高め、青年会議所だからこそできる明るい豊かな小千谷・近隣地域の実現に、私たちは理想をもって取り組まなければなりません。そのために私は、知識を詰めこむだけで学んだと誤解することなく、実際に行動が伴うことで得られる確固たる信念を持った見識ある青年経済人から構成される組織でありたいと考えます。
また、新しい日本の再建は我々青年の仕事であるという覚悟で踏み出した、1949年9月3日東京青年商工会議所(現、東京青年会議所)創立当時は、48名の若者が焼け野原の中、戦後復興のためにいかなる方法で力を合わせて未来を作り出すかを考え、信念を持って実践し、活躍していました。今の時代はどうでしょうか。財政出動、金融緩和、成長戦略といった経済政策により一時的に経済状況が活発化したかのように感じますが、少子高齢化、人口減少等に歯止めがかからず、地域とともに歩み、これから先の未来へ向かって歩き続けなければならない私たち世代のメンバーにとって、非常に不透明な時代です。こういう時代であるからこそ私たち青年経済人が、家庭、地域、会社の先頭に立ち、メンバー同士で切磋琢磨しながら、明るい豊かな地域づくりを本気で実践しようという気概をもって、取り組む必要があるのではないでしょうか。望む未来は与えられるものではなく、自らきずくものなのです。
【組織の未来づくり】
なぜ会員拡大は必要なのでしょうか。青年会議所メンバーは広域的に様々な職種の人たちの集まりであり、社会の縮図であると言えます。そのような中で多くの仲間が集い、語り合い、共有して事業を成し遂げることで、自分自身を大きく成長させる機会をもつことができます。これらを自分自身の成長の機会として捉えられる質の高い青年たちがまちの未来を考えていくこと、これこそが青年会議所活動の原点であると考えます。
また、メンバーの減少は深刻な問題であるといわれて久しく、全国的な流れと同様に当青年会議所も毎年会員数が減少の一途を辿っております。なぜ会員拡大が進まないのでしょうか。他のメンバーが活動してくれるのではないかと考えている人が増えていることや、まちづくりの重要性を説けるメンバーが少なくなってきている面もあるのではないかと考えます。明るい豊かな社会の実現が私たち市民により豊かな社会生活を生みだす源泉であり、自分自身の将来に必ず返ってくることとして理解して頂きたいのです。私たちの未来は会員拡大にあるといっても過言ではありません。
【共にきずくまちの魅力】
私たちの住むこの地域は、本州日本海側に位置する新潟県のほぼ中央、中越地方に属し、日本で一番長い信濃川により形成された河岸段丘や、美しい山に囲まれた地域特有の豊富な資源を持つまちです。一方、豪雪地帯という気象条件の中での生活が自然と人、人と人の関係においても影響し、人へのやさしさや忍耐強さを作り、この地域の魅力になっていると思います。例えば、船岡山西軍墓地に代表される戦没者への慈愛の心であったり、中越大地震での壊滅的な被害にも負けず復興を果たした粘り強い心であったりしているのではないでしょうか。そのような風土や人により、この地域の歴史、文化、伝統、産業が長年に渡り作り続けられてきたと考えます。
私はこのような自分の生まれ育ったまちが大好きです。そしてこれからもこの地域に住む人たちに、明るく光り輝いていて欲しいのです。そのためには、この地域で行われた過去の取り組みを踏まえ、まちを客観的、大局的に捉える視点や青年経済人としての視点を持ちつつ、地域の資源や特色を磨きあげ、あるいは埋もれている魅力を探しだし、外へと発信していく必要があるでしょう。また、まちづくりはひとづくりといわれますが、私たちと先駆的な活動をしている方々、行政、そして多くの市民との協働運動へと繋げていくことで、まちの魅力を共にきずいていきたいと考えます。今年度は2010年に「共にきずくまちの魅力」を目的として始めた「長期ビジョンまちづくり運動指針」の節目の年にあたります。昨年、一昨年と行われた「おぢゃれフェスタ」での学びを生かし、より地域の活性化に貢献できる運動へと進化させ、多くの人たちにまちの魅力を広めるために、失敗を恐れず自らがワクワク感動し、感動を与えられるような楽しいまちづくり運動を行っていきます。
【青少年健全育成】
子供は、私たちのまちの未来を担う存在であり、社会全体で子供の成長を支援して行く必要があるのではないでしょうか。当青年会議所は子供たちの健全育成に真剣に向かい合う中で、わんぱく相撲小千谷場所を毎年開催しております。昨年度は300人に迫る人数の参加となり県下はもとより、北陸信越地区においても有数の大規模な大会となりました。一対一で競い合い、からだとからだでぶつかりあったり、勝ち負けをはっきりと表すことが減ってきた世情において、土俵上で倒されたり、頭と頭がぶつかる痛みや、勝負に負けた時の悔しさで涙を流すような、からだとこころで痛みを感じることにより相手の痛みを知る。そんな経験を通して、相手の事を思いやれるようになる機会は、特に青少年期の人格形成において非常に素晴らしく有益であると感じます。
また、私は小学校6年生の時に第1回わんぱく相撲小千谷場所に参加しました。大会を通じて心のありようを学んだだけでなく、全国大会へ向けての練習会を通じ、学年関係なく他校の子供たちと触れ合い親しくなったことや、両国国技館で全国から勝ち上がってきた選手の試合を見た経験は楽しい思い出となっています。当時、青年会議所がどんな団体なのか、どのような目的で開催していたのかはわかりませんでしたが、立場を変え自分自身が主催者側として活動に参加していることは感慨深いものがあります。また、そのような機会を与えてくれた青年会議所の先輩諸氏に感謝をしています。
そのような経験を踏まえ、子供たちに身近に行えるスポーツである相撲の楽しさを味わってもらい、心身の鍛練や健康増進といった青少年健全育成の運動を広げていきます。
【魅力ある大人の背中の確立】
戦後教育は、日本の経済発展、国民の生活レベルの向上に寄与してきました。一方社会構造の変化の中で、道徳に対する意識が希薄となり、自分だけ良ければよいといった利己主義的な風潮が、無意識に膨らんでいるような状況にあると感じます。
そういった世情を表しているのが子供たちであり、それを形成しているのは私たち大人であると言えます。子供たちは、いつの時代であっても親や地域の大人たちを見て真似て育つものです。それが代々、ずっと続いていくわけですので、私たち親世代が正しい行動をしないと、ゆくゆくは孫にまで影響してしまうのではないでしょうか。
また、大人も悪いことはしてはいけない、正しい行動とは何かということは分かっているのです。人のこころがより深く清らかな至福感に満たされるのは、決してエゴを満たしたときではなく、利他を満たした時であり、そのような行動が巡り巡って自分に返ってくるのではないでしょうか。他人の利益を重んじ、他人が利益を得られるようにと振舞おうとする利他の精神(こころ)や、人として正しいことを追及するような徳ある生き方の大切さを知っているだけに留めず、実践していくことが重要だと考えます。
本年度は、2010年度に「魅力ある大人の背中の確立」を目的に策定した「長期ビジョン教育運動指針」の節目の年を迎えます。過去の事業を振り返り、発信力を高めるとともに、私たち世代を育ててくれた大人への感謝の気持ちを忘れずにより良い運動へと繋げていきます。
【震災復興の感謝】
中越大震災から本年は10年を経ることとなります。当時、小千谷や川口地域に住むたくさんの人たちが日本全国の多くの人たちからの力強く温かい支援にどれほど勇気づけたられたかは計り知れません。その時の感謝の気持ちは、どんなに時間が経っても忘れてはいけないものだと思います。私たち小千谷青年会議所メンバーも震災時からのメンバーが数えられる程度になってしまい、当時の活動や全国の青年会議所メンバーから受けた支援の記録や記憶が薄れてきているのではないでしょうか。私たちが当時受けた数々の励ましに対する感謝の気持ちや地震の記憶と教訓を、震災が起きた当時の事を思い出し、当たり前のような日常の有難さや一瞬一瞬を誠実に生きることの大切さとともに、改めて広く多くの人たちに伝えることを考え実践していきます。
【終わりに】
「偉大な人に出会わなければ人間としての成長はない」というルソーの言葉があります。
私は青年会議所に入会し、多くの先輩や仲間に出会ってきました。能力、知識、技術、心、優しさ、包容力、リーダーシップ等の自分にはないものを持った優れた人たちに接し、自分の未熟さを痛感し、その人たちに近づきたいと切望することが多々ありました。時に人は井の中の蛙であることに気づき、努力することで成長していくのだと思います。青年会議所はまさにいろいろな価値観を持つ多様な人々に出会い、自分を成長させる最高の学び舎です。また、そういった人たちと心が触れあう密度の濃い時間を通して事業を実施していくこと、さらには使命感、責任感ともいえる120%のちからを燃えたぎらせて行うことで自分自身を磨いていく場だと思います。
私たちがやらなければ誰がやるといった気概をもったまちづくり、まちのニーズと他者から評価を得られる事業を継続して行い発信することで、多くの仲間を増やしていくというような好循環のスパイラルを形成し、小千谷青年会議所の未来へ向かって進んでまいりましょう。私たちの未来は私たちが住むまちにあります。私たちの住むまちの未来をきずくことができるのは私たちです。偉大なる先輩、仲間、まちへの感謝の気持ちを持ちながら、自分自身が感動し、そして周りを感動させる活動へと昇華し、私たちのまちの未来(あす)づくりを共に進めてまいりましょう。
事業計画
- 組織の価値向上のための12名以上の会員拡大
- 創立55周年の感謝の気持ちを伝える事業
- 震災復興10年の感謝の気持ちを伝える事業
- 魅力ある大人の背中を確立するための事業
- 郷土の魅力を追及し地域の未来(あす)を考える事業
- 青少年の健全育成に資する事業
- 卒業生による青年会議所の魅力を高める事業
- 青年会議所の活動を幅広く広報する取組