【萬代不易】
2009年度に社団法人小千谷青年会議所は創立50周年を迎えます。
1959(昭和34)年9月21日、晩夏の中創立に向け汗を流した高野雅初代理事長を中心とした若者たちの手から、この小千谷青年会議所の歴史が始まりました。そして現在まで、いつの時代においても我々の先輩諸兄は常に学び、諸問題に挑み、成功を勝ち取ってきました。
『山あり河あり 暁と夕日とが 綴れ織る この美しき野に
しばし遊ぶは 永遠にめぐる 地上に残る 偉大な歴史』
(西脇順三郎先生の詩 山本山山頂の詩碑より)
小千谷が生んだ偉大な詩人・西脇順三郎先生はこの詩において、我々を優しく包み込む美しい風景を、掛け替えのないものとして誇り高く愛に満ち溢れた言葉で表現しました。西脇先生の若かりし時は、西洋社会への強烈な憧れから日本的なもの、中でも故郷(ふるさと)を嫌悪し、小千谷という言葉を聞くのもいと厭うたといいます。しかし時を経て日本の伝統、その中に息づく美しさを再発見し、新しい境地に辿り着いた西脇先生は、いつしかこのまちを慈しむようになります。そして詩と評論・絵画において素晴らしい功績をあげ、惜しまれながらこの故郷(ふるさと)で永遠の眠りにつきました。
この詩碑の前において、先人達が厳しくも美しい小千谷の地で、優しく忍耐強いところや自分たちの事は自分で何とかするというこの地域の気風を、信濃川の如く悠然と流れる時間の中で築き上げてきたという誇り高い事実を感じ取ることが出来ます。私はその気風を受け継いだ若者達が、夢を熱く語り常に高い目標をもち挑戦し続ける、という小千谷青年会議所の持つ「精神(こころ)」を醸成してきたのだと考えます。そして小千谷青年会議所の50年の歴史とは、その「精神(こころ)」を普遍なものだとして捉え、各世代に生きた若者達が丹念に紡いで、次代へと繋いで来たことなのだ、と強く感じました。小千谷青年会議所の偉大な歴史に、今の我々が持つ「精神(こころ)」を重ねて、萬代不易なものとなるようにしたい、という想いで私は本年度小千谷青年会議所第51代理事長を拝命いたしました。
我々小千谷青年会議所現役メンバー一同は50年に及ぶ歴史の重み、 存在する意義をあらためて強く感じるとともに、歴代理事長をはじめとする在籍した全ての先輩諸兄に心から感謝し、今後も小千谷青年会議所の歴史に恥じぬよう全メンバー一丸となって地域社会に貢献していく所存です。
【更なる高みへの挑戦】
我々は常に新しい問題に心を配り、青年会議所活動を通じて挑戦を続けなければなりません。また自らを高みにおき、成功を掴むためには、数多(あまた)の功績を残してこられた先達に学び、想いの込められた事業の中に連綿(れんめん)と流れる「精神(こころ)」を汲んで行動しなければなりません。そして理想実現のために流した汗、嫋々(じょうじょう)と溢れ出た想いをまた自らの骨肉とし、そして後に続く者に繋げることが、メンバーに与えられた大きな役目の一つだと考えています。
しかし、時代とともに価値観が移り変わり、事業構築において大きな見直しを迫られたり、事業実施の際に真に求められているものと我々の活動に差が生じ、機軸がぶれて迷う場面も少なくありません。今一度積み重ねてきた「精神(こころ)」を土台にし、新しい風を吹き込んだその中にこそ、自侭(じまま)・自画自賛に終わることのない素晴らしい結果が見出せると私は信じています。そして時代の変化に際して揺ぎ無い信条を持ち、メンバーが迷いなく集えるように、また地域への愛情と誇りを自覚し、この先の活動に対して自信をもって行えるように、「小千谷青年会議所宣言」をこの50周年の機会に採択します。小千谷青年会議所宣言の提唱により我々の活動を明確にし、更なる高みに向かって突き進んでいけることでしょう。
【子どもたちの健全育成】
現代社会において大きな問題のひとつとなっているのが、子どもたちの教育です。全国的に凶悪犯罪の低年齢化、青少年の非行や悪質ないじめによる子どもの自殺、更には家族への殺人事件等、多くの親が子どもの将来に不安を抱えたまま生活しています。また事業の際のアンケートの分析や言動を聞いたりする際に、私は子どもたちもどこか刹那的で厭世観に溢れ、自らの未来に対していいイメージを持っていないように感じます。現代の青少年の置かれている環境を鑑みた時、そこには、本来日本人が持つ「利他の精神」を学ぶ機会が少ないのでは、或いは完全に欠落しているのではないかという憂いを持っています。利他の精神とは“自分の欲よりも前にまず他人を思いやる心”です。己を律し周囲を慮ることを学び、その実践によって得られる大きな財産、即ち自らの生命の意義を見出すことが今最も子どもたちに必要なことだと私は信じています。伝統ある国技・相撲を通じて相手を敬う礼節の心を身につけ、思いやりの心を養うことが利他の精神を学ぶ機会となり、それが子どもたちの健全育成に貢献することに繋がるとの考えから、本年度もわんぱく相撲小千谷場所を開催いたします。
また子どもたちが大きな夢を持ち、無限の可能性を信じ真摯に生きていくために、ひた向きな努力の素晴らしさを肌で知る機会を創出する必要があると考えます。本年度の社団法人深川青年会議所との協働事業においては、子どもたちの交流に加え夢の実現を経験してもらうことに力を注ぎ、明るい笑顔を更に輝かせるよう努力してまいります。
さらに各世代についても先祖を敬う気持ちや、家族愛、郷土愛、更には郷土への誇りも失われがちではないかと考えます。誇りを育むためには次代を担う子どもたちに自らが親として、また地域の大人として手本となってこのまちの素晴らしさを自らで知り、愛し、子どもたちに伝えていく機会を作ることの必要性を強く感じます。その中で先人達が国や郷土を良くしたいという一途な思いの下でたゆまぬ努力、犠牲、そして決断を経て今の私たちが存在していることを知って、そこから郷土への愛や誇りが生まれるのではないでしょうか。そのために我々は子どもたちを取り巻く親と、地域の大人に対する啓発事業を行い、その機会を通して小千谷青年会議所としての想いを発信し、想いに触れた市民の皆さんが子どもたちを明るい未来に導き、その上で子どもたちが夢を実現するために努力できる環境を作っていけると考えています。
【個人と社会の調和 地域作りへの想い】
自立した個人がそれぞれ互いの領域を意識し、かつ相互に依存し合う社会の中で我々は生きています。その中で「おもいやり」「おかげさま」といった日本固有の美しい気風・習慣が作られてきました。しかし現代においては、相手との繋がりが次第に希薄になり、結果個人の確立が出来ずに互いの領域がぼやけてしまっているように感じます。自分は何なのか、自分は社会に対してどう関わっていけば良いのか解らない中で、自らの存在を誇示する手段として、連日の痛ましい事件がおきているのではないでしょうか。また、匿名での情報公開や悪意のある流言を撒き散らし、第三者を批判するだけの悪意に満ちた情報の氾濫に対し、私は強い危機感を持っています。これらの事象の中に、自己利益の重視と他者の利益を軽視・無視する考えが横行しているように感じます。最大多数の最大利益を求める功利主義、いわゆる近代経済学の基本的立場が青年会議所活動の根幹を成しています。この思想に併せ、自らの情報によってのみ周囲や状況を判断するのではなく、相手を理解する、またそれを最大限努力することがこれからの情報社会にとって我々が説いていかなければならない大きな命題であるでしょう。
周囲との共存をもって初めて成り立つ自分という存在を自覚し、「おもいやり」「おかげさま」の精神によって周囲との強い絆を創って行くことの大切さを、この地域から積極的に発信することによって、国家の繁栄、さらに人類の発展に結びつくと私は信じています。
地域に暮らす市民の皆さんがまつりを通して周囲の方々とふれあい、この地域の良さを再発見してもらうことを目標とするためにおぢやまつりへの参画事業を本年度も実施し、この事業によって地域に暮らす市民の皆さんが互いに強い絆を感じてくれれば、理想とする地域社会が必ず実現するものと確信しています。
また、本年はあの中越大震災から5年を経ることとなります。小千谷・川口の地域はそれこそ日本全国より温かく力強い支援のもとで、元に戻ったように見えます。しかし見つけなければ、気づかなければならない真実を、不都合ながら、先の震災により見出した筈です。尊い犠牲を得つつ我々の現在が成り立っていることに、今一度受け止めなければなりません。そして再度被害を検証し、この先起こる経済・社会双方の問題を提起し、これからどう地域を創っていくのかを模索しなければなりません。愛するこのまちを守り育てていくために、我々はまちづくり事業を通じて災害の実情を今一度真摯に受け止め、改めて復興を強く誓い、実現に向かって行動を起こしていかなければいけないと強く感じます。真に明るく豊かな社会とは、被害を復興によって乗り越えた其の先に創られるものだと考えます。
【動機の大切さ】
私は先輩からも、仲間からも、そして後輩からも日々教えをうけ、自省を繰り返しながらも成長させてもらっている、と日々考えています。そんな私は、社会の一員として存在しながら、何となく自分の関わる周囲や将来に対して漠然たる不安を抱いていた28歳の秋に、青年会議所活動に出会い世界観を大きく転換させられたのです。それは望む未来は与えられるものではなく、自らで作り出すものだという先輩方の能動的な姿勢によってでした。個人の力だけでは望む未来を創ることは難しい、ならば同じ志を抱く若者が集い力を合わせて理想を語り、見返りを求めない純真さを持ち、若さ故の無限の可能性を信じて突き進んでいこうと奮闘する姿に、私は強烈な憧れを抱き、同時に感動を覚えました。そして憧れと感動を自らの動機としてここまで活動を続けることが出来ました。
事業を企画していく過程での仲間との議論や、友好JCである社団法人深川青年会議所との交流事業を通じて私が得たことは、友はかけがえのない大切なものであること、自分の知らない先にまだ沢山のものが在るということ、そして事業の成果は自分一人の奮闘ではなく、周囲の厳しくも暖かい支えによって得ることが出来る、ということです。その得たものを前にして私の心に強く浮かんできた言葉、「感謝」の気持ちを会員に伝え、与えられた使命を全うしていただきたいと強く願います。
【個の発想力と組織の実行力】
青年会議所活動の醍醐味は何といっても事業の実施にあります。予定者の段階から議論を重ねた事業を実行し、現実化し、感動が生まれるその瞬間、それまでの苦労が吹き飛ぶほどの充実感と達成感に包まれるのです。それは、その事業内容が困難であればあるほど大きいものとなります。 けれどただ単に大きな事業を目指すのではなく、事業実施に至る過程を大切にし、効果目的を明確にしなければなりません。他方では近年、チャレンジ精神を忘れ無難に失敗なき方向を目指す傾向があり、また 小さくまとまった方が好まれ大胆な意見が敬遠されがちになっています。しかしながら50周年を迎える本年度は100周年に向かっての第一歩を踏み出す年でもあり、 もう一度原点に立ち返り先輩諸兄が培ってきた「精神(こころ)」に想いを馳せる時期であるといえます。
私は組織のあり方とは、個々の発想を大切にし、裏付けを充分にもった熱き血の通う想いであれば実現に向けて力の限り支えていくべきものだ、という信念を持っています。そして我々は組織の内部でそれを間近で感じ、自分の糧とすることで理想の実現という高みに向けての自己研鑽となると考えます。その過程で信頼し、尊敬できる終生の友を作ることが出来るのは、青年会議所活動を続け、人生を歩む上で大きな財産です。
想いは宇宙の果てまで馳せるが、現実にはまだ地球を出ることすら困難です。我々の描く理想と現実の間にはこれだけの差があると言えるでしょう。しかしその差を詰めようとする想い、即ち夢をカタチに変え理想を現実のものとしたいというこの欲求と、理想実現の為に日々の漸進を裏付ける地道な努力こそが、人間を人間たらしめる所以なのではないでしょうか。
発想の素晴らしさをカタチに変えてゆく力、これを本年度の社団法人小千谷青年会議所の組織運営において一番大切にしていきます。そしてかたち容は少々荒削りであっても、常に熱い気持ちを持ち続ける集団でいられるように、私は心を砕いていきたいと考えています。
【公益社団法人格の取得に向けて】
前年度の通常総会において我々社団法人小千谷青年会議所は、公益社団法人格の取得に向けて動き出すこととなりました。非常に大きな転換点を迎える現況ですが、我々の活動をもっと広く、端的に表現していくための重要な足懸かりになることを期待しています。そして小千谷青年会議所が更に大きく飛躍するために、また方向性を誤ることなく進んでいくためには、未知への挑戦という意味も込めて必要不可欠な決断であると信じて漸進していきます。そして得られた成果によって組織の基盤は強化され、時流に翻弄されることなく活動方針を掲げ、事業遂行に向け真摯に活動を続ける組織への完成に繋がっていくこととなるでしょう。
【新たな試み「運動」】
活動するための会議体として存在する小千谷青年会議所ですが、他方我々は行動を前面に押し出し、行動によって地域社会に影響を与える運動体としても機能します。その運動として本年度社団法人小千谷青年会議所は、環境保全を一年間通して取り組んでいきます。地域の環境破壊を抑制し、今よりも更に良い状態で次代に残すのは、我々に課せられた義務なのです。その為に我々が今すぐにでも出来ることを実践していかなければなりません。
ただいきなり生活ペースを変えろと迫るのではなく、立ち止まって考えることの大切さ、必要なものは残し使わないものは極力抑える、という等身大の運動を展開し、個人と組織にあったやり方の模索を呼びかけます。そして我々の「精神(こころ)」を受け止め、繋いでくれる次代の若者たちに、胸を張ってバトンを渡せるようにこの地域の未来を守って行きましょう。
【最後に】
政治は混乱し、高齢者や身体障害者の方々にも経済的な自立を促す現在の情勢は、決して安定して平和な社会を作り出せる状況にあるとはいえません。日常生活においても支障が出るほど物価が変動し、一地方都市である小千谷市・川口町に至っては出口の見えない不況にあえいでいる状態です。小千谷青年会議所においても会員数は減少傾向にあり、 先行きの不透明さからか時間をさいて活動することが困難な状況になっています。しかし今一度JCとは何かと考え直して見ますと、『社会のリーダー』という立場なのです。先行きの不透明な現在だからこそ率先して地域の問題に体当たりし、積極的な活動によって未来を切り拓くというリーダーたる我々小千谷青年会議所の真価が問われる時です。
入会当時の気持ちを取り戻し、修練、奉仕、友情のJC三信条を踏まえ、 未来の小千谷川口地域のために全力で活動していく集団を目指し進んで行きます。 地域社会での位置づけからも存在が問われてきた昨今、我々は小千谷青年会議所が繋いできた萬代不易の「精神(こころ)」を胸に活動に邁進していきたいと考えています。
事業計画
- 50周年記念事業
地域住民に向けた啓発事業
・ 式典の開催
・「小千谷青年会議所宣言」の起草
・記念誌の製作
- 教育事業
・子どもたちの健全育成を目標とする、親と地域の大人に向けた啓発事業の企画・運営。
・ 子どもたちの無限の可能性を更に輝かせるための、体験事業の企画・運営。
- まちづくり事業
・ 震災復興を漸進させ、小千谷・川口地域に住む方との更なる結びつきを深める事業の企画・運営。
- おぢやまつり参画事業
・市民の方々と関わりながら、青年会議所としての参画方法の検証をし、今後の
おぢやまつりにおける我々の事業展開を考える。
- わんぱく相撲小千谷場所の開催と県大会への参加事業
・相撲を通しての礼節と相手への思いやりの心を育む。
・全国大会出場を目標とする。
- 公益法人制度改革へ向けての準備
・移行に伴う定款の変更等、公益社団法人格取得への準備。
- 会員拡大事業
・青年会議所活動を理解した上での入会人数の増加を計る。